ペットボトルのリサイクルは駄目という説に対する反論がイマイチな理由

ペットボトルのリサイクルは駄目という説に対する反論が目立たない理由 | WIRED VISION
http://wiredvision.jp/blog/fujikura/200804/200804041200.html

 藤倉良先生から、「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」の武田邦彦先生に対する反論が出ている。が、困ったことにびっくりするほど正論なのだ。リサイクルが「正しい」か「正しくない」かと言う議論に白黒決着をつけることはできないことは、多少LCAをかじった事がある人ならだいたい分かることだし、武田先生のようにそれを白だ黒だと歯切れよく言ってしまうことが科学者のスタンスとしてどれだけ危険かということも、多少学会発表なり論文投稿なりしたことのある人ならだいたい実感していることだろう。科学者としては知っていて当然のことである。
そんな当然なことばかり言っているから「目立たない」のだ。


 人に効率的に物事を伝えるためには、正論ではなくて極論を述べなければならない。例えば上司から難しい仕事を依頼されたとき、「確率的には厳しいですがもしかしたらできるかも知れません」と正論を言う人と、「難しい仕事ですが、何とかやってみせます」と極論を言う人のどちらに仕事を頼みたくなるか、という話である。相手にアクションを起こさせるのに必要なのは蓋然性ではなくてインプレッションだ、という社会人としてのコミュニケーションの常識が、このような「目立たない」科学者には著しく欠如していると思う。極論を述べなければ、物も売れないし、人も集まらないし、科研費ももらえない。困ったことに、日本にいるマトモな研究者のほとんどがこの「目立たない」科学者なのだ。だからいつまでも研究者の地位が低いし、ドクターも就職できない。


 もちろん「目立つ」ことによるリスクも多い。極論を述べればそれだけ多くの反対意見を生むことになるし、それに伴ってマスコミ対応とかクレーム処理とか仕事が増えれば肉体的にも精神的に疲れることになるだろう。武田先生も某緑豆のようなエコロ教ロビイストの信者にいつ刺されるかビクビクしながら過ごしていることだろう。特に廃棄物回収なんて同和利権の固まりだし、いつ猫の首が送りつけられてくるか分からない。このようなプレッシャーの中で、あれだけの極論を言っていられるからこそ目立ち続けられるのだ。それに耐えうる勇気を持たないひ弱な科学者が正論だの啓蒙だのブツブツ裏口叩いているのは惨めでしょうがない。


 あと、僕は専門外なのでゴチャゴチャ言うのはアレなのだが、

1に対する反論
平成16年度に分別回収された24万トン(238,469トン)のうち、再利用(再商品化)されたのは23万トン(231,377トン)。再商品化率は97.0%。

この再商品化率ってのは、もちろん中国への輸出分は除いてあるんですよね?途上国に廃棄物丸投げするのはリサイクルとは言いませんから。もちろんリサイクル施設の不足により国内に山積みにされているペットボトルも除いてあるんですよね?

2に対する反論
 1本のペットボトルを作るのに必要な石油はその2倍だが、一般的に行われているペットボトルから卵シートや繊維を作るマテリアル・リサイクルに必要な石油は、ペットボトル重量の5分の1以下。いったん化学分解して、またペットボトルを再生するケミカル・リサイクルにしても、必要な石油はペットボトル重量の半分からほぼ同量。

 そもそもペットボトルのマテリアルリサイクルって、ほとんどオープンサイクルですよね。一回卵シートとか繊維を作ってしまえば、その製品は二度とリサイクルできなくなりますよね。だったらそれらの製品が、現行のバージン石油プラスチックと価格競争してある程度駆逐できている、というデータが無いと、結局リサイクルという名目で無駄なものをガンガン大量生産しているということになりますよね。実際そうじゃないんですか?登山用具メーカーのパタゴニアがリサイクルPET製のフリースを生産中止にしたのも、肌触り悪すぎて売り物にならなかったからですよね。
 「ケミカル・リサイクルにしても、必要な石油はペットボトル重量の半分からほぼ同量。」ってどうゆうことですか?ほぼ同量だったらリサイクルする意味ないですよね。上記事のリンクにも書いてますけど、帝人がケミカルリサイクルやってたけど採算取れなくて最近工場閉めちゃいましたよね。

3に対する反論
 ペットボトルは効率的に収集すれば1キログラム(約33本)を100円以下で収集できる。マテリアル・リサイクルにかかる費用も1本10円程度。そもそも費用が3倍かかるから、エネルギーも3倍必要であるという議論がおかしい。

 「効率的に収集」できる自治体や業者がいったいどれだけいると思っているんですか?つーか「効率的に収集」ってどんな方法ですか?同和利権でどれだけマージンとられてるのか計算に入れてますか?どちらにせよマテリアルリサイクルで作られた製品が「本当に必要とされているのか」という視点がない限りいつまでたっても机上の空論ですよ。


 うーん。専門分野以外に目がいかない科学者って怖いね。社会的常識を飛ばして、統計データと論理的思考だけでものを言うから。はいはいバイアスバイアス。


(4/7 修正)
反論への反論を追加。


[rakuten:book:11308993:detail]