2年C組ゴロツキ先生〜山分けゲームで今夜はウハウハ


「おはようwwwwお前ら元気かwwwwww」
とある30人学級。2年C組ゴロツキ先生は今日も元気です。
今日は個別進路相談の日。


「今から一人ずつ面談はじめるけどさ、待ってる間みんな退屈だと思うので、じゃんけんゲームでもしませんか。一発勝負待ったなし。で、先生とじゃんけんして勝った人全員で10000円を山分けします。もちろん俺のポケットマネーですよ。太っ腹だろう?惚れるだろう?あいこと負けは何にもありません。罰ゲームとかも無いんでご安心を。
 じゃあ、全員面談終わった後にじゃんけんするので、出す手を一生懸命考えといてください。他の人と相談してもいいですよ。」



ざわ・・・ざわ・・・



「じゃあ、出席番号一番から理科準備室に来てくださいねー。」



<理科準備室>

「さっきのじゃんけんゲームだけどさ、出す手決まった?」
「いや、まだです。」
「ちなみにあのゲームの期待値ってどれくらいか分かる?」
「えーっと、じゃんけんに勝つ確率が1/3で、さらに勝者の人数によって一人当たりの賞金が違うから場合分けしてコンビネーションでシグマで・・・」
「バカだなーお前。このゲームの参加条件は30人みんな一緒だろ。30人全員が同じ勝率。そして賞金の10000円を山分け。さあ期待値はいくらだ?」
「あっ、10000÷30で約333円ですね。」
「正解。そこでお前にラッキーチャンス。400円で俺が出す手知りたくね?」
「は?」
「俺の出す手がわかってたら期待値はいくらになる?」
「えーっと、勝者が10人ぐらいになると考えて大体1000円くらいですか?」
「厳密には違うが大体そうなるな。1000−400=600円は確実に儲かるんだ悪い話じゃないだろ?どうだ?」
「なんか胡散臭くないですか?グーとか言って本当はパー出したりするんじゃないですか?」
「majiだって。信じろって。嘘だったら400円返すよ。」
「じゃあわかりました。その情報買います。はい400円。」
「まいどー、俺グー出すから。」



<全員の面談が終了。再び教室>


「さーて面談も終わったし、そろそろじゃんけんタイムと行こうか。」


「最初はグー。じゃんけんポーン!!!」


先生は本当にグーを出しました。
そして30人の生徒全員がパーを出しました。沸きあがる歓声。


「ちょwwwマジかよお前ら。全員勝ちとかどんだけwwwww
 もうお前ら大好きだ。賞金はみんな持ってけドロボー!」


約束どおり賞金の10000円を山分け
10000÷30=333円(小数点以下切捨て)
そしてみんな気付きました。


あれ、情報料が400円だから400−333=67円損してね?



<職員室>


「あれ?ゴロツキ先生今日はご機嫌ですね?」
「まあね。」


30人からせしめた情報料は400×30=12000円
賞金から差し引いても2000円の儲け。


「さーて、今夜は飲みにでも行くか。」


END


解説

 お粗末さまでした。

 今回、情報商材を絶対に買ってはいけない理由を高校2年生にも分かるように説明するというコンセプトで書いてみたのですがどうでしょうか?(なぜ2年生かというと、条件付き確率と期待値について習うからです)

 ちなみにこれは数学というよりは、経済学におけるゲーム理論を用いたトリックです。一人一人が利益を最大化するために最適な行動をとると、結局全員が損をしてしまうような状況が生まれることがあり、これを「ナッシュ均衡」といいます。

 情報商材とかマルチ商法とか、いわゆる「うまい話」と呼ばれるものは、往々にしてこのようなトリックをうまく活用していると思います。結局、うまい話というのは他のみんなにとってもうまい話だから、全員が同じような行動をとってしまい、少ししかない利益のパイを同じ方法で食い合ってしまうんですよね。そしてうまい話に参加する人が増えるごとに一人当たりの利益は少なくなっていき、最終的に情報料の元が取れなくなる。

 「うまい話には裏がある」のは単なるおばあちゃんの経験則ではなく、経済学的にもそういうことなんですね。


今日の鬱しりとり:裏金