狼と香辛料 - 支倉凍砂 / 文倉十


狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)


 やる夫の資本論で紹介されてたように、ファンタジー世界の行商人の生活を通して経済のしくみが分かりやすく学べる異色のライトノベル

 1巻の内容は行商人のロレンスが旅先の村で豊作を司る狼の化身ホロと出会い、一緒に旅をすることになったところから、若手の行商人ゼーレンが持ち込んだ儲け話がもとで商会間のゴタゴタに巻き込まれる所まで。

 商業とか感情の駆け引きとかも並みのラノベ以上には面白いのだが、この作品のすごいところは中世の政治、経済を基にした綿密な設定考証だと思う。騎士団(よくあるファンタジーの忠実で自己犠牲的なナイト様は間違い、史実では契約ありきの即物的な傭兵)と教会の関係とか、都市国家群と貨幣の流通システムとか、やけにリアリティがある。

 黒澤明が「七人の侍」でリアリティのある武装農民を映し従来の時代劇のイメージを覆したように、「狼と香辛料」は、魔法とツンデレが全てだと思っているファンタジーライトノベルの生ぬるい幻想をぶっ壊してくれるのではないかと今後が楽しみだ。

 アニメのほうも見ましたが良いです。コンテは普通ですが、音楽とか背景の作画とか原作の世界観を感じさせるものにこだわりを感じます。