バイオ燃料・バイオマスエネルギーまとめ

バイオ燃料とは

 バイオマスを原料として作る燃料のこと。産業分野におけるバイオマスとは「生物由来の資源のうち化石燃料を除くもの」であり、つまり木材、草、穀物や、廃油、汚泥などの廃棄物を利用して作り出す燃料のこと。

なんでバイオ燃料を使うのか?

 地球温暖化問題のおかげで、世界的に二酸化炭素の排出を減らそうという機運がある(下記「バイオ燃料のメリット」参照)。石油の可採年数はあと40年くらいと言われていて、将来的には化石資源も尽きると考えられるので、今のうちに代替になるものを作っておこうというわけ。

バイオ燃料の種類

バイオエタノール

 トウモロコシ等の穀物を発酵させてつくったエタノール。つまり酒。もともと世界初の量産車と言われるT型フォードはエタノールで走っていたが、より安価な石油にシフトしていった。その後はオイルショックや近年の地球温暖化問題で石油が叩かれるごとに注目されるようになる。
 ブラジルではサトウキビで作ったエタノールで車が走っている。アメリカではエタノールを添加したガソリンが「ガソホール」という名前で流通している。日本でもガソリンに3%まで混ぜて走っていいことになっていて(E3と呼ぶ)、代替ガソリンとして実用化が進んでいる。エタノールの精製方法についても数多く検討されていて、大成建設、丸紅、月島機械等の企業が共同開発した廃材からのエタノール精製プラント(大阪)が有名。

バイオディーゼル燃料

 略してBDFとも呼ばれる。菜種、大豆などの植物油とメタノール、アルカリ(苛性ソーダ等)を反応させて作られる脂肪酸メチルエステル(FAME)が主成分。ドイツでは大規模な菜の花の栽培と燃料精製のシステムが確立されている。他のバイオ燃料に比べると小規模な施設で精製が可能なので、日本では染谷商店(東京)、菜の花プロジェクト(滋賀)などを初めとした中小企業や市民団体が、廃食油を原料にしてリサイクルという名目で精製を行っている。京都府のように自治体レベルで大規模プラントを運営しているところもある。ただし、廃食油から作られた燃料は不純物によってエンジントラブルを引き起こすなど問題も多い。

ETBE(エチルターシャリーブチルエーテル

 植物由来のバイオエタノールと、化石燃料由来のイソブテンを合成して作られる。日本ではガソリンに8%程度のETBEを混合して、「バイオガソリン」という商標で流通している。バイオエタノールと異なり専用の設備を必要としない、燃料特性に優れていることなどを理由に、石油業界がゴリ押しで生産を続けており、バイオエタノールの直接添加を推奨する政府とモメている。

バイオガス(メタン)

 生ゴミや汚泥を原料に微生物のメタン発酵によってメタンガスを発生させる。メタンガスは都市ガスの主成分なので、既存の設備で利用できる。また、C1化学による石油化学製品の代替原料としても検討されている。地方の自治体(特に畜産、農業地帯)がメタン精製プラントを多く建設している。

固体燃料(チップ、ペレット)

 林地残材や廃材を粉砕したチップや、細かく粉砕して圧縮処理したペレットは、ボイラーや暖房の燃料として利用される。単位当たり熱量が低く輸送コストが高いので、林業の盛んな地区で、自治体や市民団体、もしくは個人で自給的に利用されている。バイオマスとは少し違うが、ゴミや廃プラスチック、古紙を圧縮処理した固形化燃料(RDF、RPF)なども一部自治体で生産されている。


 ほかにもバイオメタノールとか液化木材とか木材ガス化とかいろいろあるが、汎用エネルギーとして実用の見通しが立ってるものはほとんど無いはず。


バイオ燃料のメリット

カーボンニュートラル

 植物は二酸化炭素を吸収して炭素を固定するので、その植物を燃料として利用しても、大気中に放出される二酸化炭素は相殺される、という考え方。つまりバイオ燃料を使うことで地球温暖化問題における二酸化炭素排出を抑制することができるということ。

既存の技術体系が利用できる

 バイオ燃料の起源をさかのぼると「薪」になるのだが、このように人類は昔から炭を焼いたりアルコールを醸造したりしてきたわけで、それらの技術がエネルギーの生産において容易に応用できる。ハイテクを必要としないため、自治体レベルで小規模なプラントを作ったり、中小企業が自由に競争に参入したりすることもできる。

エネルギー供給源の分散

 エネルギー源のほとんどを海外からの輸入に頼っている日本にとっては、エネルギーが自給できるようになればエネルギーセキュリティの面で好ましい。また、上記のように地方自治体や中小企業が参入することで国内でも供給源を分散することができる。

リファイナリーへの応用

 バイオマス核融合、太陽光、風力など他の新エネと決定的に違うところは、バイオマス化石燃料と同様にマテリアルとして利用できることである。特に木材からは石油と同様にパラフィン類(芳香族炭化水素)とオレフィン類(鎖状炭化水素)を取り出せる可能性があるので、現在の石油化学工業の代替としての利用も考えられる。

バイオ燃料の問題点

収集コストの高さ

 油田は一ヶ所穴を開ければ終わりだが、バイオマスは広範囲にわたって木を切ったり植物を刈ったりしなければならないので、人件費などの収集コストが高くつく。特に広い平地が少ない日本は、穀物バイオマスの大量栽培、収穫において圧倒的に不利。その結果廃材や廃油等に頼らざるを得なくなるが、廃棄物は不純物が多いので原料の品質を保つのが大変。

食料との競合

 最近よく報道で話題になっている、穀物価格の高騰はまさにこれが原因。アメリカでバイオエタノール用のトウモロコシの需要が増えたため、食料、飼料用のトウモロコシが圧迫されている。そもそも現時点でも世界全体で見れば慢性的な食糧不足の状況で、余剰穀物を燃料にまわすのはどうか?という人道的問題とかもある。

カーボンフローを考慮した場合

 カーボンニュートラルというのは「炭素固定量≧燃焼によるCO2排出量」とストックで考えられがちだが、時間軸を考慮すると実際には「炭素固定速度≧燃焼によるCO2排出速度」でなければならない。植物の生育速度はそんなに早くないので、他のクリーンエネルギーを併用しつつ、炭素バランスに気をつけながら利用していかねばならない。

実用化について

 バイオディーゼル燃料、バイオエタノールETBEあたりが既に市場に出ているところだと思うが、NEDO等の補助金無しで回している事例はほとんど聞いた事が無い。ETBEの原料のバイオエタノールは確かブラジルから輸入してて、結局供給先が中東がブラジルに変わっただけという気もする。多分日本ではコスト的にだめなんだろう。今後原油価格が上昇し続ければ、バイオ燃料もペイするようになるのかもしれないが、イメージとしては核融合のようにポテンシャルの高い新エネが実用化するまでの「つなぎ」といったところだと思う。むしろ数十年後を見据えると石油化学工業の代替としての木材化学工業の方が面白い気もする。

参考文献

主にWikipediaと脳内知識
バイオエタノール(バイオガソリンバイオ燃料)関連記事:まとめ:Garbagenews.com
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/01/post_2078.html
農林水産省/バイオマス・ニッポン http://www.maff.go.jp/j/biomass/index.html
バイオエタノール・ジャパン・関西 株式会社 http://www.bio-ethanol.co.jp/
エタノール変換 | 月島機械株式会社 http://www.tsk-g.co.jp/tech/industry/bio02.html

バイオマス産業社会―「生物資源(バイオマス)」利用の基礎知識

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図解 バイオエタノール最前線

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