愛すべき女・女たち - ジャン・リュック・ゴダール、フランコ・インドヴィナ他
- 出版社/メーカー: 東北新社
- 発売日: 2004/04/23
- メディア: DVD
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俗に世界最古の職業と言われる「娼婦」について、当時のヨーロッパを代表する6人の監督が撮ったオムニバス形式のコメディ映画。第1話の「先史時代」(監督:フランコ・インドヴィナ)から順に現代まで時代を下り、最後の第6話でジャン・リュック・ゴダールが「未来展望」と題した未来の性愛について描いている。
が、ぶっちゃけ第一話〜第五話は普通の古典的な欧米風コメディなのでどうでもいい。ゴダールの前座みたいなもん。
第六話の「未来展望」はやはりゴダールだった。
未来には全ての人間の役割が細分化されていて、娼婦も、一切しゃべらずに肉体だけを提供する肉体的な娼婦(マリル・トロ)と、聖書に書かれた愛の言葉だけを語る言語的な娼婦(アンナ・カリーナ)に分業されている。そのどちらにも満足できない男(ジャック・シャリエ)は、最後に「ある方法」を思いつく、というストーリー。
出てくるシーンは空港とホテルの一室だけ、そのシーンのほぼ全てがモノクロ、延々と垂れ流される政治的モノローグ無線通信、という閉塞感バリバリの映像が、高度に管理統制された未来社会の無機的構造をうまく表現している。彼は、哲学を語るのには部屋一つあれば良いということを知っている。そしてその哲学は、約20分の映像のなかで最後の数十秒に集約される。
「ワン・プラス・ワン」もそうだが、このころのゴダールはやたら政治色が強い。この作品にも画一化された管理社会への強烈な皮肉が見て取れる。ゴダールはこのあと数十年の間あやしい集団を結成して政治映画を作っていたらしいのだが、その片鱗が垣間見える。うーん、やっぱり昔の素直なゴダールのほうが好きだなー。