馬鹿が戦車でやってくる - 山田洋次 / ハナ肇、岩下志麻

馬鹿が戦車でやってくる [DVD]

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 耳の遠い母親、知障の弟と暮らし、日頃から村人にバカにされていた乱暴者のサブ(ハナ肇)が、ある出来事をきっかけにブチ切れて、納屋に隠していた戦車で村人を追い掛け回すという、かなりブッ飛んだドタバタコメディ。
 発端は病弱のヒロインかつ、村民のマドンナ紀子(岩下志麻)が、昔から仲の良かったサブを自分の快気祝いの行事に誘ったことである。快気祝いの厳粛な席であからさまに場違いなサブはみんなから馬鹿にされ、紀子の父(花沢徳衛)から祝いの席を追い出されてしまう。紀子の手前でプライドがズタボロになったサブは飲んだくれて暴れまくり、警察を呼ばれてしまう。紀子の親切心が仇になってしまったわけだが、こうゆうヒロインの浅い配慮はかわいらしい。ていうか40年前の岩下志麻かわいいよ岩下志麻ほんとかわいい。「なめたらいかんぜよ」とか言ってるイメージとは程遠い。
 暴れるサブを村人が取り押さえようと四苦八苦する大捕り物は必見。普通捕り物って刑事の熱いタックルと犯人の悪あがきが交錯する緊迫したシーンのはずなんだが、このステレオタイプをうまく逆手に取っている。泥酔して暴れまくり、派手に物損しながら村人の制止を振り切って田んぼへ逃げるサブ、村人が協力してサブを取り押さえようとするのだが、村人もみんな泥酔しているので要領を得ずすぐ取り逃がす。田んぼで泥だらけになりながらフラフラな村人たちがグダグダ追っかけまわす様は絵的にかなり面白い。
 で、戦車。「愛国87号」と書かれた、ダンボールかなんかで作ってんじゃないかって言うくらい安っぽいテクスチャの小型戦車なんだが、可愛すぎ。そして小回り効きすぎ。富豪の家やら村議会議員の家を破壊しまくって、村人はしゃぎまくる。村人が落とし穴掘って戦車落とそうとするコントとか、鉄板ギャグも随所に見られる。床屋の爺さん(渡辺篤)とか郵便局員小沢昭一)とかいい味出してるなあ。黒澤作品みたいな村民像というか、没個性群像の中で生きる個性みたいな。